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『ナラティブホームの物語』書評


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敬愛する佐藤伸彦先生著書「ナラティブホームの物語」が出版され、
早々に重版も決定されました。
そこで、医学書院より書評を依頼され、恐縮ながら書かせて頂きました。


『ナラティブホームの物語』書評

株式会社シルバーウッド
代表取締役 下河原忠道


介護の理想と現実をつなぐ
おせっかいな医療チームと
出会える本


本書の著者 佐藤伸彦医師とナラティブホームのスタッフが、当社の運営するサービス付き
高齢者向け住宅(サ高住)「銀木犀」を視察に訪れてくれたときのことである。

折しもお昼時。彼らは、食堂で一人寂しく座る入居者にいち早く目を付け、対話を始めた。
膝を落とし、目線を合わせ、肩に手を寄せ、やさしくゆっくりと話を聞き出すその姿を、
まず遠巻きに見ていた。その出身がナラティブホームと同じ富山県だったこともあり、
会話は弾む。やがて、入居者の頬に一粒の涙が。正直言って激しく嫉妬した。普段から生活に
密着している我々にもなかなかできないことを、いとも簡単にやってのけてしまうそのチーム
の連係プレイの凄さに、嫉妬したのだ。
それは、我々がいかに「介護サービスを提供するだけの事業者」であるかを認めざるを得ない
体験だった。日本の「最先端医療」とはかくあるべきと感動した。

私は最近、介護保険制度に依存したビジネスモデルの将来性に懐疑的である。
それは、進みすぎた医療技術による日本の病院診療そのもののかたちに酷似しているからだ。
サ高住は賃貸住宅だ。しかし、その実態は、要介護1.2程度の軽度要介護高齢者を集め、
介護漬けにすることで事業の継続性を担保しているビジネスモデルになりつつある。いわば、
介護保険制度の隙間をついた「本当に必要なのだろうか事業」ともいえる。
もちろんそんな事業者ばかりではないのであろうが、大半はその方向だ。
我々も気がつけばそう成り下がってしまう可能性が極めて高い。この現実をどう捉え、いかに
事業を正しい方向へ導いていくのか――。その道しるべが本書に記されていると思う。

【自宅ではない在宅を、施設や病院という枠を超えて、別の角度から挑戦しようという
挑戦でもある】(本書第Ⅱ部ナラティブホームの風景160頁)。まさにナラティブホームの神髄
はここにあると思う。
私はサ高住だろうが本当の自宅であろうが、ひとが最期を迎える場所はどこでもいいのではな
いかと思っている。まさにケアの質は環境に依存しているからだ。そこで生活する本人の思い、
関わる人の行動が肝要だ。
本書に記載されるように、人は「役割」を喪失してしまった時点から生きる力を失う。それは
たくさんの入居者を見ている私も強く感じることだ。先の挿話は、まさに入居者へ役割を持た
せるものであった。

後日談もある。その入居者の地元の魚をわざわざ「本人宛」に取り寄せ、他の入居者へ振る舞
う機会まで整えてくれたのだ。著者の人に対する思いやりの強さ。本来、指導者がとるべき行
動の模範となる行動だと思った。まさに本書で言うところの「やさしさのしかけ」なのだろう。
なんともワクワクするしかけではないか。普段から理想と現実のギャップに打ちひしがれてい
る介護士たちへ様々な「しかけ」を行っている我が身として、さらに勇気をいただく指導であった。

私はおせっかいな人が大好きだ。
そして、間違いなく本書は、世界ナンバーワンのおせっかいチームの物語である。

Profile

Profile

下河原忠道

株式会社シルバーウッド代表取締役
/薄板軽量形鋼造システム スチールパネル工法躯体販売事業/サービス付き高齢者向け住宅「銀木犀 ぎんもくせい」運営/財団法人サービス付き高齢者向け住宅協会理事

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